それでもその意地の悪い運転手はクラクションをブーと鳴らし続けた。父は「なにしとんじゃ、降りてこんかい」と言ってポケットに入っていた小銭をタクシーに投げ付けた。運転手はもちろん車から降りてこず窓も閉めたままだった。

母はできるだけ父を止めようとしたが父の怒りは収まらなかった。それ以上は待てず、心配しながら姉を残して、私と母は点滴に急いで向かった。点滴がやっと終わり戻ると、姉だけがいて父はそこにはいなかった。

姉によると運転手が警察に連絡し父が連れて行かれたということだった。母と姉と私は病院があった大阪福島区の福島署に行き、父が出てくるのを署の前で数時間待った。

しかし、父は姿を現さなかった。ここで更に驚く事件が。父を心配して待っていた時に、なんと姉が「晩ご飯どおすんのー? すき焼きする予定やったやん」と言った。「えっ!? 今それ言う!?」と、私は笑いを堪えるのに必死だった。

姉の根性をとおり越したKY(空気読めない)ぶりに完敗だった。

この発言は姉の我が道を行く(Going My Way)の性格をよく表している。次の朝には父は家に帰って来ていた。父は「お父さんは悪いことしてないから最後まで戦う」と家族に言った。

父はヒーローだった。

娘として父の名誉を守るために明白にしておきたいのは、父は決して悪い組織の一員ではないっ! ごく普通の会社員だ。

次回更新は12月14日(日)、18時の予定です。

 

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