【前回記事を読む】神だけが口にできる“禁断の果実”――天使ミカエルが見た創世の秘密と、運命を変えたエデンの真実とは?
第1章 光の神が創った世界
2―3 赤子のアダムとイヴ
樹の下には丸裸の赤子が二人、抱き合うようにして横たわり、スヤスヤと寝息を立てて眠っていた。光の神が言ったように容姿は天使や女神に似てはいるが、翼もなく肌も柔らかい。皆の目は無防備で純粋無垢な赤子に向けられるとしばらく釘づけになった。
ラジエルとガブリエルが赤子を抱きかかえ、プルプルの頬っぺに指でそっと触れてみた。
「この者たちは何をしておるのだ?」
「眠っているのです。人間は睡眠をとることでエネルギーを蓄えたり、治癒力を高めたり、さらには成長もするようです」
プルプルの頬っぺが気に入ったようだ。
「こんなチビが地球の長とはねぇ?」
子供たちをまじまじと見ながらガブリエルが呟いた。
ラジエルが抱えていた子が急に目を覚ますと、彼の顔に何か温かいものをかけた。
「何だ、これは?」
「ハッハッハ! ラジエル、それはオシッコといって人間から出る排出物だ。少し臭うらしい」
「ええっ! ヤハウェ、早く言ってよ。臭いよ!!」
皆は大いに笑い、神からの幼い授かり物に感謝した。ヤハウェはその子に「アダム」と名づけた。
「最初の人間として、このすばらしい地球の物語を始めていく者。だからアダムだ!」 ラジエルは誇らしげにアダムを天高く持ち上げ、改めて神に感謝した。アダムは無邪気に笑っていた。ラジエルはその笑顔に愛しさが込み上げ、アダムを抱きしめた。
「えっ! またぁ! 勘弁してよ!」
生温かいものが再びラジエルにかけられた。
皆が笑った。その声でガブリエルの腕の中で眠っていた子も目を覚ました。
「こっちも目を覚ましたぞ!」
「宮殿に戻って兄に話さなければ。この子たちを見て、きっと喜ぶであろう」
ミカエルらは子供とヤハウェを伴って宮殿へと飛び立った。