【前回記事を読む】そのおぞましい身体を美しい女神の姿に変え、地球に降り立った闇の神。「この美しき地球を我が物とする!」
第1章 光の神が創った世界
2―2 神殿を司る女神ソフィア
やがてラッパが鳴り響くと、心地よく流れていた音楽も止(や)んだ。皆の視線が廊下に向けられた。宮殿を司(つかさど)る女神が現れたのだ。女神が動くたびに長い髪がしなやかに揺れた。
天使たちは一瞬にして女神の美しさに心を奪われ、持っていた杯を落とす者、茫然と立ちつくす者もいた。ガブリエルは酔いがいっぺんに吹き飛び、ポカンと口を開けたまま女神に見入っている。
女神は皆に微笑みかけながらルシフェルのそばに歩み寄った。そして、彼の目を見つめ、軽くお辞儀をした。
「私はソフィア。この宮殿を司り、この地球の秩序を守る者」
ルシフェルはソフィアの前にひざまずくと、手を取り甲に優しく口づけた。
「私はルシフェル。これは我が弟ミカエル。共に天界から遣わされた。神を守り、神を敬う者なり」
ミカエルはルシフェルの後方で頭(こうべ)を垂れた。
「この宮殿はほんとにすばらしい。何もかもに心を奪われる。特に君のその美しい瞳に」
ルシフェルはソフィアの手をとって椅子に座らせ、果実酒の入ったグラスを手渡した。ソフィアの憂いを含んだ美しい瞳を見つめながら話し始めた。そこはまるで二人だけの世界のようであった。二人は一気に距離を縮めた。