「神が我ら兄弟をこの地球に遣わされた理由はよくわからないが、私はそなたに会えただけでも感謝しなければならぬな」

ルシフェルはソフィアに微笑みかけ、果実酒を飲み干しながらミカエルに合図を送った。

ミカエルはルシフェルから送られてきた“しばらく二人だけにしてくれ”という合図に気づかず、二人の間に入り話を始めかけたが、察したラジエルが慌ててミカエルの手を引っ張った。

「ミカエル、さっそくだが今からエデンの園を案内しようと思う。一緒に行こう」

「わかった! では兄にも伝えねば」

ミカエルはまだ場の雰囲気が読めていないようである。

ラジエルとガブリエルは半ば強引にミカエルを引っ張り出すと飛び立った。

ルシフェルとソフィアは沸き立つ愛しさに身を任せた。心が通い二人が恋に落ちるのに時間はかからなかった。二人はそっと口づけを交わし、お互いを感じた。

音楽が再び奏でられると、宴が再開した。天使と女神たちは手に手を取って踊り始めた。どこからともなく愛の天使キューピットが現れると二人を祝福し、美しい歌声を響かせた。
 
ミカエルたちが丘に着くと天使や女神たちが温かく出迎えた。

「兄はソフィアに魅了されたというのだな」

ラジエルになだめられたのか、丘に着いてようやくミカエルはすべてを理解したようだ。

丘には黄金色の果実をつけた樹と銀色の果実をつけた樹があり、ミカエルは何よりも真っ先に目を奪われた。

「この美しい果実は何なのだ?」

ガブリエルがミカエルの前に立ち、張り切って答えようとした時、光に包まれた天使が茂みの中から現れた。

「ミカエル! 私はヤハウェ。神の御言葉(みことば)を語る者」

ヤハウェはミカエルに軽く会釈し、話を続けた。

「ミカエル、ここはエデンの園にあるエデンの丘だ。この果実は神だけが食すことができるもので、我ら天使や女神でさえ口にすることは許されないのだ」

ミカエルが果実に近づいてよく見てみると、神の言葉が無数に刻まれていた。

「ミカエル! その黄金色の果実をつけた樹は生命の樹といい、銀色の果実をつけた樹は知恵の樹というのだ」

ヤハウェは神の命(メイ)により、この果実を管理していた。

「この果実が減ると新たな大地や命が誕生し、この地球の何かしらの役割を担うこととなる。だが、その役割を担う命には限界があり、我らのように永遠の時間を生きることはできないのだ」