140ヤード・パー3のホールでは、一人もワンオンしなかった。寄せ切れず、パーも取れないでいたのに。パー4のホールでも、2打で乗らず、グリーン周りで行ったり来たりしていたあの人たちが、全員80前後で回ったというのか。何かインチキがあったはずだ、とは言っても、証拠はない。
後ろから見ていて、そんなに上手な人たちでないことだけで、非難もできないかと思った。キャディーが付かないコンペでは、四人ともお友達という組でラウンドすれば、インチキをする人が出ることは仕方がないのかもしれない。主催者も、うすうす気付いてはいても、賞品を渡すしかないのだろう。
帰りの車の中で、二人は今日のコンペの非難の気持ちで一つになった。でも、桔梗は、女子の部でのべストグロスと、5位の商品をもらったので、私ほどは怒っていなかった。あと、女子のドラコン賞も取ったのだ。怒っていないというより、ご機嫌だった。
「世の中そんなものでしょう。嫌だったら競技ゴルフの世界で頑張るしかないわよ」
「そうだね。でも、審判がいないスポーツだからといって、スコアのごまかしは最低でしょう。主催者も知り合い四人でプレーさせないようにすればいいのに」
「きっとバチが当たるわ。あの人たちを、神様が許すはずないもの」
「へえ。どこの神様がバチを当てるの」
「ゴルフの神様よ。もちろん」
それ以来私たちはオープンコンペには出ていない。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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