【前回の記事を読む】妻子ある男を運命と信じてしまい、禁断の愛に溺れて報われないと知り、苦しみに沈んでいった

第一章

「これからどうなるのかしら?」

河合は少し考えてから今日子を抱き締め、「好きだよ」と笑顔で言った。「そうじゃなくて、これからのこと」ともう一度尋ねてみたが、「いまが楽しかったらいいじゃない。それだけじゃいけない?」と逆に尋ね返してきた。そうすると今日子は何も言えない。

心のどこかで、こんな言葉をいろんな女にも言ってるんだろうな、という声はするけれど、それでも河合と離れることが怖かった。女にもて、女にだらしない。ハッピーエンドにはならないこともわかってはいたが、そのぎりぎり感に酔っていた。

なぜか胸のどこかが甘くうずいていた。それが最大の問題であるのではないか、とも思ったが、今日子にはどうしようもない。

湧き起こる感情は抑えることはできない。結局、そんなふうにして時は過ぎた。

もし私が妊娠をして、河合に結婚を迫ったら、河合はどう答えるのだろうか? 家庭と私のどちらに天秤は傾くのだろうか? 答えは薄々わかっていた。

天秤は私には傾かない。二人の関係が突然始まったように、別れも突然来るのだろうか? その時、私は耐えられるのだろうか? 

わからない。胸が苦しい。

「あの」

頭の上で声がした。

「そこいいですか?」