「父ちゃんがしっかり反対すればよかったとやけど、先に立ってよこしゃんの肩を持って、たきつけたけん、今となったらどうしようもないけんね。神さん仏さんに流してもらうように頼むしかないやろうな。」

二人は溜息ばかりついていた。数日たって重正は実馬に呼ばれた。

「重正、嘉子に子供ができたそうだな。」

「そうたい、俺もびっくりしてなあ。まだ物が少ないけん子供の物が揃えばよいがなあ。」

「重正その子は産んじゃならん。早いとこ下ろすんだな。」

「おとっちゃん。」

重正は思わず我が耳を疑った。

「おとっちゃんこの子は俺たちの初めての子ばい。何で下ろさないかんとね。」

「お前たちは血が濃すぎるから間違いなく障害児ができるだろう、そんなことになったら子供が可愛そうだろうが。これも親心だ。」

「けど世の中にはそんな人も大層いるやろ。もしそんな子ができたら、俺たちが身の立つように育てるたい。」

「重正、おまえ自分たちの事だけを考えちゃいかんぞ、お前には三人も弟がおるんだぞ。その子のために弟たちに嫁の来てくれてがなかったらどうするんだ。障害がある子供を産むということは丸山家の恥になるんだぞ。大下さんも言うてただろうが。」

「そんなら何であの時そう言うてくれんかった。」

「そりゃお前たちを一緒にしてやりたかった親心ではないか。子供が欲しければ養子をもらうという方法もあるんだ。洪と新が大学を出てからゆっくり考えればよいことだろう。今はあれたちの学校のことを第一に考えてやるべきではないのか。」

重正の中で何かがはじけた。

次回更新は12月6日(土)、20時の予定です。

 

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