【前回の記事を読む】「何をしているのですか?」大学で犬を散歩させる白衣の教官に尋ねると、「実験犬を躾けている。」半信半疑のままついていくと…

随想 素晴らしき出会い

2 恩師とともに――「吉田茂邸」散策――

後日、先生からいただいた著書と業績集を読んでみた。その中で多くの実験動物を扱ってきた学者としての大変興味深い記述が目に止まった。

「部下には、イヌ型、ネコ型、サル型がある。イヌ型は忠節の代表で、えさをもらえなくても常に傍らでしっぽを振っている。だからついつい頼りすぎる。

ネコ型はえさの時は傍らにいるが、こちらの用事を頼むとどこかに行ってしまい何をやっているかよくわからない。

サル型は、一見イヌ型で忠実なのだが、常に隙を窺っていてこちらが弱みを見せると噛みつき取って代わろうとする。もちろん自分を含め皆それぞれの型を何割か持っているのだろう。しかし、私の周囲にはイヌ型の割合の高い人がとりまいてくれた」と。これは教室をまとめ長く主宰してこられた教授だからこその言葉であろう。

今回「吉田茂邸」を散策し、教授夫妻と昼食をともにして、お二人の息の合った姿を見ていると、お互いに「イヌ型同士」で尊敬しあい、仲睦まじく人生を歩んでこられたのではないかと感心した。私自身、今からでも女房に対し限りなく「イヌ型」に近づく努力が必要であろうか。

(平成21年1月)