【前回の記事を読む】「桜の国ほど興味をそそられる国は他になかった」——日本が好きな外国人夫婦。そこへ訪れた喜ばしい出来事とは…
第一章 遠いかなたの日本
「拝啓
尊敬する閣下、この手紙を差し上げる無礼をお許しください。長春であなた様をお待ちしております。私の感謝は富士山よりも高く、伊勢神宮のように清らかです。
あなた様が私に下さった親切は太平洋さながら深いものです。あなた様のお手紙は私の人生において太陽の光のようであり、あなた様からの知らせは、火事で打ちひしがれていた私を生き返らせてくれました。
最近嵐がありまして、美しい富士を白髪のような山に変えてしまいましたが、穀物は今まで通り朱色や黄色の絨毯のような広がりを見せております。お尋ねの金蒔絵の件ですが、いつ仕上がるのかと、幾度も問い合わせました。
Yに早く完成するよう急かせます……私の子供は元気に育っておりまして、あなた様に前回お越しいただいた栄誉のことを何度も繰り返し話しています。
ご多幸をお祈り申し上げます。
あなた様の忠実な僕より」
オサムは彼が言った以上のことをしてくれた。というのは、彼は私たちを長春どころかハルビンで出迎え、私たちが気に入るであろうと思ったいろいろな補給品を持参してくれたのだ。
ハルビンを出発したあと、私たちは水流が地面を削ってところどころ少々でこぼこしている平坦で低くうねった地域、満州を通過した。黒い大地は見渡す限り丁寧に耕されており、この時期には畝(うね)になっていた。この地域の特産である豆の袋を積んで、毛むくじゃらの子馬たちの引く古びた荷車の群れが風景を横切っていった。
時折、石とレンガ造りで強化された小さな衛兵所を通り過ぎたが、そこには哨兵(しょうへい)が配置されていて、山から駆け下りて鉄道部品を持ち去ろうと企む強盗への守備にあたっている。
長春で日本政府が私たちを賓客として歓迎し、私たちのために特別列車の個室が用意されていることが分かって安堵(あんど)した。ここからは、私たちを出迎え、私たちが日本国について尋ねるあらゆる情報を提供するため派遣された日本の将校に警護された。
彼らはお辞儀をして、汽車は私たちのために特別に通常の時刻表より早く走る予定であることを告げ、やがてよく整備された路盤の上を期待通り速度を上げて走った。