無数の刀剣の国について

初めて私に教えてくれた

私のお父さんをしのんで

紹介文

いろいろな国を取り扱ったシリーズ本につけられている「魔法」という用語は、直ちに、それらの国の歴史上最もロマンチックで魅力的なエピソードや、地理上の大変美しく魅惑的な景観や、住んでいる人々の魅力的な特徴を目の前に彷彿とさせるように思われる。

この豊かで柔軟性のある用語のもとで、物語は、できることなら現実の魅力を高めつつ、山の景色にかかる薄いベールのように、その虹色の光を織りなすことができたのである。

幸運な作家たちは、あたかもソロモンの魔法の絨毯に乗ったように空想の空飛ぶ乗り物で旅をし、理想的とは言え、真実という確かな基盤の上に諸事を描くことができたのである。

時折、運命は現実を理想化するようだ。というのも、一般の作家は、東洋の宮廷という物語にとってこの上ない幸運な舞台にはめったに巡り合うことはできないし、ある異国情緒豊かな帝国に赴任した大使の妻として、突然このような場面に連れていかれた好奇心旺盛な一人のアメリカ人女性の境遇から湧き出る生々しい体験以上に申し分のない情報源を手にすることは、めったにできないであろう。

このような場合、物語は実際の事実に勝ることはなく、内部を観察するための機会をわざわざ作り出す必要はないであろう。なぜなら、あらゆるドアは開かれていて、当の国は完璧なまでに露わにされているだろうから。

この点において、アンダーソン夫人の『魔法の国、日本』は今まで「魔法」シリーズで出されたほとんどの本とは異なるものである。彼女の夫は一九一二年にタフト大統領から天皇陛下への特命全権大使に任命され、夫妻の大日本での滞在中はずっと、外国人にはめったに与えられない経験で満たされていた。