【前回の記事を読む】(タプタプタプ)いつか触ってみたい……と思っていた、おじさんの下アゴのたるみを揺るがしてみた
ナンシン共和国の章
友だちと冒険篇
まず、気持ちを切り替えようと、岳斗は思った。
うまくいえないかもしれない。でも、思い出しながら、知っている言葉でいえば、伝わるのではないかと考えた。
僕が感じたナンシン共和国は
ここには、大断層“中央構造線”が通っている。
宇宙からも、くっきりみえる断層があり、何かのきっかけで、ナンシン共和国に住む人たちの心の時空が、曲がってしまったようだ。
僕にはよくわからないので「そういうこと!?なんだ」、と受け止めている。 ナンシン共和国は、二重構造になっていて、建前国と本音国の2つの国がある。
ここが独特なのか、土地の時空が曲がっていることと、“何かのきっかけ”で、心の時空も曲がってしまったみたい。
国の人々の心にある、本音と建前が、別れちゃって、2つの国が成立したらしい。
そんなことが起きたので、おじさんがいった“限りない可能性”とは、何か違うような気がするな。気になるけど……。
僕は、教えてもらってから、2つの国が見えるようになった。でも、他の人は気づいていないな、とわかる。
見えない人には、建前国と本音国があるなんて、思ってもみないだろうね。
人との話し合いの中で、本音と建前の間で、どうしようかと悩む人、そんなもんだと思って、普通に暮らしている人がいることは、なんとなく理解できた。
その、心の中にあるものが、建前国と本音国に別れてしまうのは、どういうことなんだろう?
やっぱり、わかんないから、そういうことにしておこう……。 おじさんと知り合ったころ、初めて建前国と本音国の境目に連れていってもらった。とてもきれいな場所でおどろいた。
ガラス張りのような透明な階段だったな……。建前国から本音国へは階段を下りる。下りてみると上が下で、下が上で……めまいがしそうだったが、とてもきれい。万華鏡をの ぞいているような気持ちになってしまう。その先は、地下でも地上でもなかった気がする。
“美しい村”と言われている意味がわかった。この境目に大切なものが集まり、まとまっているように感じた。透明な階段を、一段また一段と踏みしめていくと、草花が素朴に寄り添っていた。
咲いている花たちの姿が、とてもかわいくて、守ってあげたいと思った。きれいがきれいに重なり合っている……。たどり着いた本音国は、建前国からの延長として、同じ風景だった。僕は元の風景に、戻った感覚になってしまった。
説明できるものはなく、すーと、何かを感じた。
振り返ると、お花畑の中に階段があり、心地いい風が吹いている。