【前回記事を読む】釣り銭も用意できなかった開店初日――39歳のシングルマザーが「雇われ店長」から自営業に踏み出した
第一章 アジアへの憧憬と初めての店創り
2 アジアへの買い付けの旅
タイ語も話せないのにタイに買い付けへ
最初は委託販売や、私が前の店から買い取った商品を中心に販売していましたが、休みなく店を開けているうちに少しずつ現金が貯まってきました。月末には委託した商品の支払いをして、残った差額が売上になります。
離婚後、長女だけは元夫と暮らし、下の男の子たち3人を私が扶養していました。元夫からの養育費はなし。家も店も借りて家賃を払っていたので、生活は、それはそれは大変でした。本心では売上全てを生活費に回したいくらいでしたが、商品が売れた分、仕入れにお金を回さなくてはなりません。
現金さえあれば、委託よりも買取は掛け率がいいので、徐々に商品を買い取るようになりました。雇われ店長の時も仕入れはやっていましたが、当時の支払いはオーナー持ち。なので、仕入れの金額をそれほど気にすることはありませんでした。でもいざ自分の店となると、支払いも当然自分持ち。
本当はもっと仕入れたいのに、そこまでの現金を用意するのが厳しくて、仕入れ額を抑えました。また売れ残りは不良在庫となるので、確実に売れそうなものだけを選ぶなど、発注する時もじっくり考えるようになりました。
もちろん雇われ店長の時も、自分の店のつもりで一生懸命やってきたし、いい商品を厳選して仕入れたつもりです。でも支払いのリスクも含めて自分で責任を負わない限り、商売をしているとは言えないし、売りたいもの、売れ筋のもの、売りたいけど諦めるものなどを考慮した結果、仕入れた商品こそが、本当の自分のラインナップと言えるのではないでしょうか。
発注しながら、やはり他人のふんどしで相撲は取れないのだなとしみじみ感じました。もし私の店のスタッフが、私に何の相談なく、好きなものだけ勝手に仕入れて、事後報告したとしたら面白くないでしょう(そもそも私にそんなゆとりはないので、仕入れをスタッフに任せることは、まずありませんが)。
安く仕入れたものが高く売れたら、当然、利益率は上がります。でもフェアトレードの商品は現地の人たちへの支援や、対等な関係の中でwin-winを目指しているので、他のアジア雑貨に比べたら仕入れが高いのです。