【前回記事を読む】高齢化率41%、人口減少と高齢化が進む佐賀県大町町―急性期治療後の患者を支える慢性期病院が果たす地域医療の使命

第二章 施設運営の基盤に第三者評価を求める

施設の建設中から、高齢化、人口減の到来を見据えて、慢性期病院としてどのような医療提供をおこなうかを模索していた。

病院として認められるために、病院機能評価取得を当面の目的としたが、新しい施設は病院、老健、マネジメントセンターの三施設が連結しており、スタッフが同じシステムによって管理・運用できることが理想と考えていたところ、偶然にISO9001規格(以下ISO)に出会った。

一九九五年頃から、大手電子部品メーカーの産業医をしていた。二〇〇一年、会社の雰囲気がいつもよりざわついていたので「何かあるの」と尋ねたところISO取得の審査が近くなり、準備で忙しいとの答えがあった。

「ISOって何」と聞いたところ簡単に説明できないが、会社の運用や取引に必要な規格で、「病院で取得されるなら、ずいぶんお世話になっているので担当社員を指導に行かせますよ」と課長さんがおっしゃった。

早速当時の橋本道夫事務長にその話をしたところ「大いに興味があります。できないことはないでしょう」との返事で「よしやってみよう」となった。新築移転後の熱気がそうさせた。

病院機能評価は絶対に取得可能と言っている事務長でも、二つ同時の準備は大変と思い、コンサルタントを依頼した。

実際は予想したよりはるかに大変だった。まず専門用語がよく解らない。最初の「顧客満足」はまだしも、品質マニュアルによって現場が動くことが文書化されると、「品質マニュアルは医療法人順天堂における品質マネジメントシステムについて規定する」の文言になることに面食らった。

その後読んだ「マネジメントの父」P・F・ドラッカーにして「マネジメントは多くの意味を持つため難しい言葉である」と言っている。当時のわれわれにすぐには理解できなかったのも当然である。

ISOも病院機能評価も目指すものは同じで、同時に受審した方が効率的であるし、始めた以上は止められない。当時ワープロと、1台のPCを使って、事務長、老健事務部長、総師長、リハビリ部長、看護師長を中心とし各部署長達も他部署に遅れると迷惑がかかると続いた。

勤務後深夜まで苦闘の日々が六カ月以上続き事務長は日が明けての帰宅が多かった。努力の結果、品質マニュアルが完成し、第一、二段階審査をパスし、二〇〇二年一月十七日に認証を取得できた。

病院機能評価認定はもともと基本理念を掲げ、病院の運用マニュアルも作成していた。ハード面は新しい施設でほぼ問題ないと思っていた。

その当時は予備審査制度があったので助かった。カルテ庫管理について厳しい指摘と数箇所の改善項目が指摘された。本審査でもいくつか改善箇所が指摘されたが修正をして二〇〇二年二月十八日に認定を取得した。ほぼ同時に二つの目的を達成したスタッフ一同の頑張りに敬意と感謝の気持ちで一杯だった。施設が一体になった。

現在まで、認証、認定が継続されている。

産業医の職場巡視でも、①ゾーニング、②道具整理、③職場巡視、④労働災害発生に対する予防処置など学ぶことがあった。われわれの施設も副総看護師長による定期的な職場巡視を取り入れ、環境整備に役立っている。