「わぁー綺麗。でもザンマちゃん、まだ自分でするでしょ……」と、新堀さんが言うと、「私はもうしないよ……」と、母は力なく答えた。「なに言ってんのよ、まだこれからオシャレして一緒に出かけるんだよ……」と励まされるも、母は無言で答えない。自分の好きな物を大好きな友達に使ってもらえてこそ本望なのだろう。

二人でアルバムを観ている。「こんなに楽しい思い出がいっぱいあったなんて……」母は感慨無量の様子でしみじみと言った。けれど、いつか母はそれを忘れてしまう。せっかくの大切な宝物を……。

そうして、遅くまで語り合い、新堀さんは帰っていった。母の胸に、祭りの後のような寂しさが訪れた。

旧友(とも)ありて 懐古の砌(みぎり)
尽きせぬに
忘(ぼう)ずるあらじ 常(とこ)しえの宝