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プロローグ

コラム1 後期高齢者の手習:ピアノ演奏と書道

2022年の夏、大阪自宅にある娘が昔使用していたピアノに初めて触れた。6ヶ月前にピアノを始めた4歳の孫娘と、同じく3年前に始めた7歳の孫息子が次女娘とともに帰省中であった。私も孫の相手をするつもりでピアノに触れてみた。そしてピアノに挑戦する気持ちが湧いてきた。

右手と左手を巧みに弾きこなす様は、プロピアニストのそれでなくても、孫のそれですら、私には超人的な技に見える。しかし、4歳の孫娘にできるなら、75歳の私でも不可能ではないだろうと考えた。

そこで、スマートフォン用のピアノ独習アプリをダウンロードして、まずはお試し期間である1週間やってみた。孫息子や孫娘にジィジ間違っていると言われながら悪戦苦闘した。1週間が過ぎ、有料コースに突入した。そして、東京でも練習できるように電子キーボードを購入した。

この歳でも、やればできるというのが実感だ。人間の能力は素晴らしいと感じている。

75歳後期高齢者でも、全く新しいことに挑戦することは可能だ。人間の能力は柔軟性に富んでいることを自らの経験で実感した。

独学に限界を感じたので、2023年4月に大阪に戻ったこともあり、同年8月からピアノ教室で指導を受けることにした。早速、ピアノの先生に「10月にピアノ発表会があるので出演してください」と言われた時は頭が真っ白になった。

そして、生まれて初めてのピアノ発表会では『エリーゼのために』の主旋律のみの簡易バージョンをなんとか弾いた。そのあと、オリジナルバージョン(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン作曲)もそれなりに弾けるようになった。

さらに、2023年夏からフェイスブックで知り合った全く面識のない先生に書道を習い始めた。先生はニューヨークなどでの個展やポーランドワルシャワ大学での書道に関する講義をされた経験がおありの方だった。色紙に自分自身の言葉を認めたいというのが書道を習う目的である。

8月に門を叩いたら、「来年2024年3月に個展を開催するので出品せよ」とのことであった。ピアノだけでなく、書道までも初心者にいきなり作品を出品せよとの指示には大変困った。

ピアノも書道も「夢は叶えるためにある」を追求してみたい。