【前回の記事を読む】YMOやオフコース、ABBAを紹介してくれた彼女にどんどん惹かれる…

第1章 中学・高校編

きっかけはインドア派芸術女子 「放課後も一緒にいたいから同じ塾に通って」

多くの男子に共通することかもしれないが、自我が芽生え、恋愛の対象として本格的に女子を意識しはじめるのは高校からだ。周囲から「彼女ができた」なんていう声が漏れ聞こえるにつれて、少しだけ自分を変えたくなった僕のとった行動は、とにかく都会に出るという冒険だった。

都内で過ごすついでにオールナイトの映画を観た。いや、逆だ、オールナイトを観ることによって都内で夜を明かしたかったのだ。ネットカフェなどない時代だったから(漫画喫茶くらいはあったかな)、高校生が都会で一泊するには、この方法しか思いつかなかった。

上映していた映画は、『うる星やつら2:ビューティフル・ドリーマー』と『すかんぴんウォーク』の2本立てだった。どちらも若者の"夢"をテーマにした映画だった。

前者は、ラムの夢であるところの仲間たちと永遠に続く楽しい暮らしへの願望を描いていた(押井守監督)。後者は吉川晃司のデビュー作であり、挫折しながらも歌手という夢を掴んでいく姿を追っていた(大森一樹監督)。

夜の新宿の映画館において、僕は、一晩をかけてこの映画を2回ずつ観た。変な興奮と緊張とのなかで、どういうわけだか熱中して観た―2順目は、さすがに少し眠りながらだったと思うが。そのせいか、自身の記憶の奥底に強烈にインプットされた。そして、生涯にわたるトラウマを残した。

2本の映画には、「現実に立ち返ることも大切だ」という暗示や、「苦難を乗り越えた先に成功が待っている」というアピールもあったと思うのだが、夢を持つことが前提で、それがなくては何もはじまらないという描き方に対して、これらを面白かったと評する前に、自分はなんて無気力な人間なのかと思った。

今日は昨日の繰り返しで、明日も今日の繰り返しとしか思っていなかった高校生の僕にとって―皮肉にも、『ビューティフル・ドリーマー』は、そういう内容の映画だったが―、この映画の意味するメッセージに軽いショックを覚えた。

クラブにも属さず、目指すべき大学が定まらないどころか、学部も決められない。それどころか理系か文系かの選択もできない。学業成績の急落に対してなすすべもなく惰性で時を過ごし、映画を観たり音楽を聴いたりゲームをしたりして、友だちとダベるだけの毎日、目標も夢も希望も何もない。それが僕の高校生活の実態だった。

そんな想い出のない高校生活だったが、唯一、僕の心をわし掴みにしたイベントが『高校生クイズ』だった。