庭にある水道口で、タワシでがさがさ洗って犬猫に食事をあげる。水は毎食毎に入れ替える。でも、ピッケが「忘れたよ」とよく台所で直に蛇口から水を飲み、お風呂場では溜まり水を飲んでいて知らせてくれたこともあった。

そんな時次衛門氏は、ごめん、ごめんと新しい水をそれぞれの水入れに入れた。次衛門氏は必ず二匹を同じに扱うようにしていた。だから忘れた時も、そうでない時も二匹は同じ状況に置かれたのだった。

忘れたことを指摘するのは、決まって猫のピッケだったが。最低毎食時に飲み水を入れ替えた。飲み水は、ピッケも犬のアイアンも人肌を好んだ。

ピッケとアイアンはとても仲が良く、いつも二匹でいたので、初めは妻が拾ったピッケに主(おも)に気を入れた偏愛になっていたが、いつの間にかアイアンの世話も積極的にやっていた。今までに犬を飼ったことがなかったということも、飼った経験のある猫より親しむのが遅れたのかもしれない。

アイアンはずっと室内で飼っていたのだが、気力が少し出てきた次衛門氏が廃材で犬小屋作りに挑戦したら、意外に娘を始め知り合いに素晴らしいなどとおだてられ、アイアンは一国一城を賜ることになってしまった。多分アイアンは、ピッケと共にいつまでも室内犬でいたかったのかもしれないが。

アイアンは下の娘が願って飼った柴犬だが、彼女が世話をしたのは飼い始めの頃で、やがてまあ「時には彼女もする」になっていて、日常的に妻の係になっていた。そういう意味ではアイアンも、妻の残していってくれた宝だった。

だからかピッケに劣らず愛おしさはあったが、馴染みがなく次衛門氏はずっと猫の側にいた。健康も取り戻しつつあった次衛門氏は、アイアンを外で飼うようになって、今までよりアイアンと散歩をするようになっていた。

 

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