【前回の記事を読む】スイス人は頑固でプライドが高い? スイス人の国民性と日本人の"あまりに優しすぎる"姿勢を比べて感じたこととは…
Part1 私のスイス生活の始まり
1. 日本人が親しみやすい国スイス
アルプスの少女ハイジは、スイス人女性が原作者
スイスでは、私の子どもが小さい頃、日本のアニメ『アルプスの少女ハイジ』もTVで放映していて、ドイツ語で見たことがあります。スイスで見ても現地の人の生活スタイルに違和感なくマッチしており、作者がスイスに滞在し、短期間でスケッチして描かれたのには驚きました。
全くの余談なのですが、日本のアニメは、ヨーロッパ中、TVでよく放映されていて、何といっても『ちびまる子ちゃん』のドイツ語版ほど、堅苦しいというか、ちびまる子のキャラクターに似合わない言語はないな(笑)、まだ、イタリア語のドラえもんの方が合っているなと感じたものです。
日本の里山と同様に、スイスの牧歌的風景も、維持努力し、作り上げられたもの
次に、スイスのイメージといえば、何といっても、あの絵葉書のようなスイスアルプスの風景を多くの人が思い浮かべると思います。牧歌的な牛とスイスアルプスの光景ですが、実は政府の多額な補助金によってスイス農家の存続が支えられ、あの風景を維持しているということは、あまり想像できないかもしれません。
つまり、日本の村が里山風景を維持しようと懸命に努力しているのと同様に、スイス人にとってアルプスの山とそこに佇む牛の風景というのは、スイスの郷愁を持ち続ける大事な資産なのです。その光景だけを見ると、スイスは牧畜が盛んな農業立国のように見えますが、実は、全産業GDPの中の農業生産が占める割合は日本よりも少ないという意外性もあります。
具体的にいうと、農業が全産業に占める割合は、スイスのGDPの1%にも満たない0.6%が実情で、これはEU諸国と比べてもかなり低い数字です(1参照)。
産業では、化学・製薬、精密機械、工作機械、金融、商品取引他、第4次産業分野も発達している国です。
農業に関しては、近年ヨーロッパではオーガニック野菜などの有機食品に対する関心が高く、その売り上げは年々伸びていますが、スイスも同様で、スイスの有機農地の割合は、ヨーロッパ諸国の平均の約2倍です(2参照)。現地の人々は、オーガニック食品のことを盛んにビオ(Bio)と言って、農薬や添加物を嫌い、なるべく自然に栽培された野菜や製品を買い求めます。
実際、現地カルチャーセンターのお料理教室の講師を10年間担当して感じたのは、スイスの人は添加物に敏感ということです。お寿司に使うガリの赤い色は、一体何の色? とよく聞かれたものです。