はじめに

スイスで経験したコロナ禍と、書き始めた雑記帳

私がこの本を書き始めたのは、2020年の新型コロナウイルス感染拡大により、スイス政府の緊急事態宣言で飛行機もストップ、私の仕事に関係するスイスのボーディングスクール(国際寮制学校)も、一時閉鎖(2020年3月半ば~夏休みまで)になったのがきっかけです。

スイスの国内移動(出張)=仕事だった私にとって「家にいなさい」と命令されるのは苦痛でしたが、幸いにも家に庭があり、森が近かったこと、比較的天候が良かったことで救われました。人間は工夫して生活すれば、そんな制限のある環境下でも慣れてくるようです。

当時、スイス政府のコロナ措置対策は、お隣のフランスやドイツに見られたような「外出禁止!」といった厳格なものではなく、いわば、欧州諸国と日本との中間といった感じで、セミロックダウンといわれていました。

お陰で毎日、森へ散歩に行ったり、専らガーデニングに勤しんで、この時も、この国に住んでよかったナと感じました。

新緑のスイスの森

スイスという国を一言で言い表すなら“小さいながらも、複雑な国”です。

当時、日本人で私のように、ドイツ語圏とフランス語圏の両方に10年以上住んだ人は、周りに殆どいませんでした。

同じ国なのに地域によって言葉が変わるので、スイス人でさえ、ドイツ語圏の人はフランス語圏のことを知らなかったり、その反対も然りで、そこには目に見えないドイツ語とフランス語の壁、文化的境界(ドイツ語:Röstigrabenレシュティグラーベン)があります。

スイスではオペア(au pair)といって、異なる言語地域に10代で国内留学するのが、特に若い女性ではよくあることでした。

この本では、私が30年間スイスに住み、現地での暮らし、結婚、育児、サラリーマン生活の後、起業した話、そして、その仕事で携わったスイス留学とボーディングスクールについてまとめました。

スイス留学について情報が少ないので、お子さんのいる家庭や、お子さんに海外留学をさせてみたいと思っている方に紹介し、将来、世界を股に掛けた若者が増えてほしいと願って書きました。