スイスは、ヨーロッパの大国に囲まれた、一見、風光明媚な観光国といったイメージだけで捉えがちです。しかし実際には、人々は頑固に、かつ、したたかに自国を守り、周囲の状況を注視しながら、常に変貌を遂げてきた国というのが私のこの国への見方です。

本書では様々な角度からコラム【スイスを知る】をちりばめて、暮らしや留学以外に、このスイスという国についても紹介しました。外から日本を俯瞰する視点は、ある意味、様々なことを根本的に考える上で役立ちます。スイスについて知りたい方にも興味深い本になっていると思います。

さらに、多言語国家スイスで、マルチリンガルはどうやって作られるかについても言及しました。日本から西洋に移り住んだ私の、海外での育児、家事、仕事の奮闘記録とスイスの様子が貴方の参考になれば、嬉しいです。

Part1 私のスイス生活の始まり

1. 日本人が親しみやすい国スイス

永世中立国のスイスは、ほぼ九州ほどの面積ですが、26州(カントン)からなる地方分権国家で市町村が細分化されています。人口はおよそ896万人(2023年スイス政府統計)、ほぼ大阪府に匹敵するスケールです。

飛行機からその地形を見ると、至る所に森が点在しているのがわかります。森には誰でも入ることができ、散歩やジョギング、マウンテンバイキング、あるいは、家族でバーベキューやピクニックをしたり、自然が生活の中に溶け込んでいます。

季節に応じて、ラズベリーやブラックベリーを摘んだり、キノコ狩りをする人々が見受けられ、楽しみ方も様々です。

日本の方々が「スイス」と聞いて、まず連想するのは、チョコレート、ハイジ、スイスアルプスの風景、チーズではないでしょうか?

世界的に有名なスイスチョコレートについて

以前、東京の在日スイス人の集まりに参加した時、スイス大使が出席されていて、参加者が私以外、全員スイス人だったことがあります。そんな中、スイス大使から「スイスのイメージって何ですか?」といきなり私に聞かれて、考えてもいなかった質問に、真っ先に「チョコレート!」と答えていたことがあります。

日本に限らず、他国の人にとっても、スイス=チョコレートというイメージは意外と強く、何よりもリンツ(Lindt)チョコレートが、世界中の空港でよく売られていることもその大きな要因だと思います。

最近は日本にも、リンツの店舗やカフェが幾つかあります。このスイスの会社リンツ(本社:チューリヒ)は1845年創業の家族経営で、正式にはリンツ&シュプルングリ株式会社

(Lindt & Sprüngli AG)といいます。米国やスイス国内のチョコレート会社を数々買収しながら徐々に拡大し、海外120カ国に販売ネットワークを持つ世界的企業です。

 

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