イギリス人によって拓かれた、スイスアルプスリゾート

スイスのアルプスリゾートは、日本の軽井沢と同様、イギリス人によって開拓されました。1790年代初め、イギリス人貴族や詩人バイロン、トーマス・クック(1808~1892年 イギリス人実業家。旅行会社を設立し、近代ツーリズムの祖といわれる)が訪れて、ツアーの先駆けとなりました。

同時に、スイスのアルプス登頂が始まり、イギリス人のエドワード・ウィンパー(1840~1911年 登山家)が、1865年のアルピニズムの黄金時代、9度目の正直でマッターホルン初登頂に成功しました(3参照)。

またスキーも、1860年頃にイギリス人貴族によって、スイスでよく行われるようになりました。

次に鉄道の歴史を辿ってみると、1847年、スイスで初めてチューリヒ~バーデン間の国内鉄道が開通します(日本初の鉄道開通は、それより後1872年、新橋~横浜間)。1871年にはヨーロッパ初の登山鉄道(ラック式鉄道)が、リギ山(標高1797m)に建設されました。イギリスのビクトリア女王やゲーテ、ブラームス、マーク・トウェイン等が訪れています。現代でも、欧州の皇族や著名人たちが毎年スキーにやって来る光景は、絶えずスイスの週刊誌を賑わせています。

自転車が運べるスイスの2階建て列車

1912年(大正元年)、ユングフラウヨッホ駅(標高3454m)が開設されました。これはユングフラウヨッホ(3466m)にある登山鉄道駅で、ヨーロッパで一番標高が高い所にあります。ユングフラウ地方はスイスアルプスとして世界遺産に認定されていて、そのユングフラウヨッホ駅まで電車で一気に行くことができます。

スイスでは、リゾート地の交通機関(登山電車、ロープウェイなど)を一度作って終わりではなく、絶えず来てもらえるように、新しいアイデアの創出に余念がありません。スイスは鉄道網で張りめぐらされた国ですが、近年でも、2020年グリンデルワルトからアイガー氷河が目前に見られる、アイガーエクスプレスが建設されました。アルプスの交通建設は今も尚続いています。


1.  日本の全産業GDPの農業が占める割合(GDPに関する統計、農林水産省令和4年)

https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/01.html

スイス連邦政府統計局(経済-事実と数字欄)全産業のGDPに第一次産業が占める割合は1%未満(ちなみにサービス業はGDPの74%を占め、産業は25%という内訳) https://www.eda.admin.ch/aboutswitzerland/ja/home/ wirtschaft/uebersicht/wirtschaft---fakten-und-zahlen.html

スイス全産業GDPの農業が占める割合は0.6%(スイス農業組合の報告書2019年概要欄3ページ)https://www.sbv-usp.ch/ fileadmin/sbvuspch/04_Medien/Fokus/FOKUS02_DE.pdf

2.  スイス連邦政府統計局、農業と栄養学(有機農地割合8カ国比較)2021年 https://www.swissstats.bfs.admin.ch/collection/ch.admin.bfs.swissstat.de.issue23078712300/article/issue23078712300-10

3.  エドワード・ウィンパー/訳・解説 新島義昭『アルプス登攀記』講談社学術文庫(1998)

 

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