【前回記事を読む】定年退職すると全ての肩書を失い、誰も見向きもしない「ただの人」になってしまった。会社の中ではあんなに偉かったのに…

第1部 学び働く

二 働くこと

振り込め詐欺に騙(だま)される原因の一つに働いていない事があると思います。会社へ行っていれば物理的に電話に出る事は出来ません。しかしそれを除いても騙(だま)される人達に共通しているのは働いていない高齢者です。社会の風にあたるとでも言いましょうか、働いていれば緊張感があり、新しい情報を取り入れないと仕事は上手くいきません。

働いていないという事は社会との接点がない事であり、最新情報を取り入れる意欲がなくなるのだと思います。詐欺師からすると世の中をよく知っているしたたかな人は標的ではないのです。

働く事は親の間違いに気付かせてくれます。自分の親を尊敬出来る人がいたら素晴らしい事ですが、完全な人はいませんから、大なり小なり偏った躾(しつけ)を受けているのではないでしょうか。

子供は親の価値観を引き継ぎますから親の欠けた所も引き継ぎます。親の悪い価値観を自分も引き継いでいる事に気付いたのは私が働き始めてからでした。働く事により矯正(きょうせい)されていくのだと思います。

一人っ子は過保護になる傾向があります。周りに子供がおらず、両親の四つの目、祖父母が加わるなら6人の視線が一人の子供に注がれます。家の中では特別な存在でも社会に出たらただの人、子供を王様の様に扱う親は将来の事を考えていないと思います。

働く事は他に意味があるでしょうか? 机上で勉強しても実際にハンドルを握るのでなければ運転を覚えないのと同様、働かなければ世の中の事が分かりません。ですから働いた経験のない人は社会基準を知らないので自分が基準になる傾向があります。私の場合、社会を知る為に働いたのではなく、これも結果論です。

働いてお金を得る大変さが分かるとお金を大事に使う様になります。こんな事を言ったら語弊(ごへい)がありますが、社会人になってから資格を取ろうとする人は学生時代より真剣に勉強する様です。自分が働いて手にしたお金を無駄にしたくないからです。

新幹線で隣に座った女の子の話によると、パンデミックの間、宅配の○○イートを食べながら高校のオンライン講義を聞く生徒が多かったとか。人から貰ったお金だとありがたさが分からないのでしょうか。