【前回の記事を読む】玄関先で寝転び、泣き喚くお隣のJ君。奥さんはどうすることもできないまま、あの子は自閉症だ、とカミングアウトして…
第一部 自閉症の世界への道
第一章 かれらにつながるきっかけ
そうだ、大学へ行こう
当時三十歳の私には四歳の長男、二歳の次男のほかに双子の三男、四男がいた。双子はまだ八ケ月だった。J君のお母さんの話を聞いた時、私はなぜか自閉症について勉強しようと思い立った。
意識の底に福祉施設で働いていた姉の影響があったのかもしれない(ずっと後のことになるが、三つ違いの姉は「こばと塾」開業の年、一人息子を残して乳がんで亡くなった)。
思いついたら即実行の性格の私は大学に行くことを決心した。東北の国立大学は出ていたものの、文学部なので障害児教育は受けていなかった。そこで自閉症の勉強のために目白の私立女子大で障害児教育を学べる児童学科に編入学することにした。
ありがたいことに、かなりの単位を前大学で取得済みだったので、編入学では通信・スクーリングで三年までの単位が取れ、通学は一年間で済みそうだった。
三男、四男が小学一年生の時、電車で一時間かけて一年間、大学に通学した。四人の息子たちをカギっ子にしたが心配はしなかった。祖父母は東北で遠方だし人に頼る気はなかったので、現代なら育児放棄と言われかねないことだったが、息子たちには自分のことは自分でするようによくよく言い聞かせて、大学への通学を敢行した。