障害児教育 衝撃の病院見学

編入学した大学では、最後の一年間は通学しないと取れない単位ばかりだった。その一つに児童精神医学があった。

講義を担当するのは世田谷区松原にあった自閉症の専門病院、東京都立梅ヶ丘病院の院長先生だった(その病院は二〇一〇年三月に清瀬小児病院、八王子小児病院と統合されて、現在は東京都立小児総合医療センターとなっている)。

児童精神医学の教授は「特別授業だ!」と言って、学生たちを梅ヶ丘病院の見学に連れていってくれた。小児病棟には身体的にはどこも悪くなさそうな子どもたちが入院していたが皆、自閉症だった。

梅ヶ丘病院で思い出したことがある。開業して一年後、西千葉に移転し、「こばと治療教育センター」という名称で療育を始めて間もなく、小学三年で会話ができる中程度の自閉症の男児が通っていた。

半年ほど経った時、彼は梅ヶ丘病院に入院した。彼には定型発達(発達障害を持たない人)の弟がいて、母親は自閉症の兄とは違うと信じ、某大学付属小学校の受験を希望していた。

自閉症の兄がいると何かと手が取られ、弟の勉強にも支障が出る。しかも、家では騒ぎ立てるので集中の妨げにもなる。一人歩きもでき、勝手にショッピングセンターに行って、お金も持たずにブルーハワイのかき氷を頼んだりすることもできるのだ。

身体的にはどこも悪くなく健康そのものだった彼は、弟の受験が終わると退院して、こばと治療教育センターにまた通ってきた。