博昭は風間と対峙した。
緊張が高まる。
博昭は中段に構えた。肩の力を抜いて右わきを締め、肘を体の内側に入れる。
風間は肩をぐるぐると回しながら、両手を軽く開いて前方に突き出した。
博昭は距離を詰める。
牽制の前蹴りを繰り出す。風間が右手でその足を払う。
動くと同時に博昭は右回し蹴りを力いっぱいに放つ。ブロックした風間の体ごともっていくほどの破壊力。
風間がバランスを崩す。追い打ちをかけるようにもう一発。風間がよろめく。
博昭は一気に間を詰め、正拳突きを繰り出す。
骨がきしむ音。仰向けに転倒する風間。
博昭は馬乗りになる。風間が両腕で顔面を防御する。
博昭は脇腹に数発のパンチを打ってから、顔面を攻撃する。
防御している腕の上から殴る、殴る、殴る。
一瞬の隙をつき、風間が下の体勢から蹴り上げてきた。顎に当たった。博昭はのけぞった。互いの体に距離ができる。風間がまた蹴ってくる。二発、三発。
互いの体に距離があるため、博昭は完全なマウントポジションが取れない。有効打のパンチが打てない。
風間の足が博昭の肩に乗った。風間は三角絞めを狙っている。かまわず殴る。
腕をつかまれた。博昭は風間の道着の襟首を持ち、腕力で風間の体ごと持ち上げた。
そのまま抱え上げ、プロレスのパワーボムのような形で道場の床に叩きつける。
風間の体が軽くバウンドした。と、同時に風間の足が首に巻きついてきた。
蛸のような動きだった。
足が絞まる。
博昭の左腕が捕られる。引き寄せられる。
風間の足がさらに絞まる。
息が苦しい。
あがく。苦しい。あがく……。
意識が遠のいた。
頬の痛みで目が覚めた。両腕が動かない。風間の両足が博昭の両腕の上に乗っている。
「約束や。依頼を引き受けてもらうで」
風間の声は氷のようだった。
次回更新は10月11日(土)、21時の予定です。
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