一方、小元先生に関しては、あくまで性格的な部分だけだと思うのだが、はっきり言って暗い。しゃべったことなどほとんどなく、なにを考えているのかまったくわからない。陰(かげ)りというか、格好良く言えばニヒルというか、アンニュイというか、そんな雰囲気はあるのかもしれないけれど、どうにもこうにも陰気くさい。
でも、でもだけれど、彼の診療技術は千登勢先輩同様、ものすごく高かった。今回の一件でそれがさらに確信に変わった。ダイヤモンドのような千登勢先輩と深い関係になれる男だとしたら、その本性とはいったいどのようなものなのか。
「いまのオマエが他人の色恋を気にしている場合か」と突っ込まれればぐうの音も出ないのだが、気になるのだから仕方がない。これはもう私の非モテとしての習性だ。〝癖(へき)〟と言ってもいい。他人の恋路が気になってしまう。
ナースとしてのキャリアはまだまだこれからだけれど、憧れのデキ上司と、得体は知れないけれどなんかちょっと気になる陰キャ先生、それ以外にも優秀なスタッフたちに囲まれたこの病院に赴任してきて私は良かった……のかもしれない。
夜勤明けの帰りに浴びる太陽の光は、このうえなく眩しい。それがいつもの日常に、またここでもなりつつある。
「あーっ、疲れた!」
今日も帰ったら夜まで爆睡だろうな。
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