ひとしきり遊んだあと、レストランの中庭に戻ってきた。途中走ったりしたこともあって暑かった。中庭に水を入れたバケツを見つけて、手を入れたり顔につけたりしているうちに、互いに水かけっこが始まった。

最初はかけられるたびに大笑い。でもそのうちにかけ方がエスカレートしていき、やがて本気モードに。ついには、頭からかけられたことがきっかけとなり、やがて取っ組み合いとなり、気がついたら殴り合いの喧嘩にまで発展してしまっていた。

そして運悪く僕のパンチが彼の鼻にあたり鼻血が噴き出す。僕はしまった、と固まり、彼は青ざめて立ち尽くす。

ここでようやく大人たち、アジア会館のスタッフたちが気がつき、集まってきた。ガブの介抱を終えると、彼を一生懸命慰め、気を遣っている。

一方で、僕には「どうしてこんなことしたの!」と責め、まるで僕が100%悪いのだと言わんばかりの雰囲気だ。「理由もわからずに何言ってんだ」とは思ったけど、殴ってしまった後悔と、ガブのダメージを思うと反論はできなかった。

暫くたって、大人たちに促されて、ぴょこんと頭を下げてガブに謝ると、彼も僕の肩に手をまわして「OK、OK!」と言ってくれた。ありがたいことにすぐに仲直りができた。

本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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