【前回の記事を読む】千駄ヶ谷で欠かせない楽しみが、とあるラーメン屋。通っているとある日、店主にまじまじと見つめられ…
318号室の扉
壁打ちテニスが繋いだ隣人たちとのラリー
「体の調子が悪く、心の病気にもなっていたけど、ボクと遊んでいたら元気になったよ。来週からまた職場に復帰だ。寂しくなったら連絡頂戴ね。その時は壁打ちテニスやりに来るよ」
杉田さんは、僕と遊ぶ時は、必ず僕の都合に合わせてくれていた。いつ仕事しているのか、夜働いているようにも見えないし不思議だった。心の病気で療養中だったのだ。アジア会館を去る杉田さんの背中を見て、「元気でね」と僕は呟いた。
社会人になって、親しくなった取引先の方と家族ぐるみの付き合いが始まった時、先方からテニスに誘われました。一瞬躊躇しましたが、「少しだけやったことがある」と返事して思い切って参加しました。杉田さんのお陰で下手ではあったけど楽しくお付き合いができました。
それからは、毎年彼の別荘に呼ばれるようになり、宿泊した翌日には近くのコートでテニスをすることが恒例となりました。テニスを通じてより仲良くなり、30年経った今でもお付き合いを続けている大事な友人です。杉田さんのお陰で大事な友人ができました。
人は元気そうに見えても、実はいろいろな問題を抱えている。それでも他人には優しく接することの大事さを教わった出会いでした。
子供たちの国際紛争
「Are you Japanese?」
生まれて初めて英語で話しかけられた。話しかけてきたのは、ブロンドヘアーの、恐らく僕と歳が変わらないであろうブラジル人の男の子だ。
話しかけられたのは、レストランの中庭をうろうろしている時だった。片言の英単語を用いてもなかなか言葉が通じない。「ポルトゲッシュ!」と何度か叫んでいるのを聞いて、先方も主言語が英語でないことがわかった。宿泊客ではなく、時々レストランに食事に来ているようである。ニックネームはガブだ。