——陸続きの国々はこんなに行き来しやすいんだ——
まだEUになる前ではあったが真亜は様々な国々に出かけて楽しんだ。
もともと料理人になりたいと思っていたため、国によって異なる料理は真亜の心を満たした。そして美しいものを見るのが好きだった真亜は美術館にも足しげく通った。
真亜はシャガールが好きだった。
シャガールの絵画は、色と形がとても個性的で、さらに彼独自の民族的な要素や宗教的な要素が取り込まれていることもあり、深い精神性を真亜は感じていた。戦争を経験したシャガールの絵画は、より詩的で感情的な表現へと変わっていった。
彼の作品は、夢や幻想、宗教的なテーマ性によって特徴づけられ、巨大なキャンバスには神秘的な要素が強く現れている。具象と抽象の要素が織り交ざり、非現実的な空間が創り出され、夢幻的な世界が広がっていた。
また彼がしばしば描くモチーフには、農民や村人、動物、植物など、自然や人間の生き生きとした姿が多く見られ、彼の作品はシュルレアリストたちからも高く評価されていた。
色彩の魔術師、愛の画家と言われるシャガールはユダヤ系フランス人であり、第二次世界大戦を経て何を感じたのだろう。
彼の全てを赦す、愛に満ちた青い作品は、真亜の心に深く訴え続けた。
ニースのシャガール美術館に足を運んだとき、音楽堂のステージ後ろのステンドグラスを見て息が止まりそうになった。
シャガールブルーと言われる暖かな青。ステンドグラスのデザインと色彩は、シャガールの独創的なスタイルとなっていた。彼のモチーフや色使いは、愛や信仰の深い意味を光と影の中に表現しており、真亜に希望や安らぎをもたらした。
三枚のステンドグラスに天地創造の七日間が描かれており、これがシャガールの愛なのか、と感銘を受け、他のステンドグラスも見てみたくなり、フランス北部のランス大聖堂に行くことにした。
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