「す、すみません」
そり頭の男が謝った。力の誇示。博昭は無精ひげの男の髪をわしづかみにすると、強引にひっぱった。
「うっ」と男が声をあげた。さらにひっぱる。男の体がのけぞる。悲鳴をこらえる男の口を空いている手で塞ぐ。またひっぱる。
ぶちっ。髪の抜ける音がした。博昭は無精ひげの男の両耳をつかんだ。
「削ぐぞ」
博昭の声はどこまでも静かだった。
「す、すみません」
そり頭が謝った。博昭はそり頭の男を見た。
「さらってこい」
そり頭の男は小刻みに頷いた。博昭は荒い息を吐いている無精ひげの男の耳を再度つかんだ。
「骸とつながってる奴らを一人残らずかっさらってこい。誰が渋谷を仕切ってるのかってことを俺が直々に教えてやる。わかったか?」
「は、はい」
無精ひげは涙目になっていた。博昭はハンバーガーを無精ひげの口にねじこむと、鼻っ柱に正拳を叩き込んだ。鈍い音がした。
無精ひげがうめき声を漏らした。鼻からどろりとした液体が滴り落ちる。血と鼻水とマスタード。「人間ハンバーガー」博昭は笑った。
力の誇示。
次回更新は10月9日(木)、21時の予定です。
👉『永遠と刹那の交差点に、君はいた。[注目連載ピックアップ]』連載記事一覧はこちら
【イチオシ記事】まさか実の娘を手籠めにするとは…天地がひっくり返るほど驚き足腰が立たなくなってその場にへたり込み…
【注目記事】銀行員の夫は給料50万円だったが、生活費はいつも8万円しかくれなかった。子供が二人産まれても、その額は変わらず。