終戦、そして結婚
昭和二十(一九四五)年八月十五日、ついに終戦を迎えた。その四ヶ月後の十二月十六日に、柳田少佐のお骨折りで、おふくろは親父と結婚した。なんと偶然にも、私たち夫婦が結婚式を挙げたのも十二月十六日だ。大変な時代に結婚式を挙げたものである。
結婚式は、親父の故郷の茨城県土浦市で行われた。東京大学医学部薬学科衛生化学教授の秋谷七郎教授の媒酌で、奥井家家族が通っていた土浦の前川教会での挙式であった。式の祭祀は、親父の母である静が通っていた教会の中村万作牧師。披露宴は、父の実家の二階の二部屋で、間の襖をぶち抜いて開かれた。
食糧難の真っただ中の披露宴は、土浦だからできたのではないか。この時期に結婚を考える人がどのぐらいいただろう? おふくろの運命を変えたこの結婚が、柳田少尉の粋な計らいから生まれたとは到底考えられず、大きな「運命」や「縁」を感じる。

写真を拡大 結婚式の際の寄せ書き

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