十五分近く行くと、流れが淀んで少し深くなっているところがあった。ここなら十分泳げる。すず子が来たら、ここへ案内してやればいい。これで泳ぐ問題は解決した。ルリエは元気を出して、さらに遡っていく。流れは相変わらず浅く、木洩れ日を浴びて生き物のようにきらめいている。

川べりの木々の梢で何か音がした。ポチが、音のした方へ向かって吠えかかる。何だろうと思って見ていると、リスの親子が素早い動きで枝から枝を伝わっていくのだ。

「ポチ、リスよ。脅かさないで」

ほんの一瞬だが、リスと目が合った。リスの親子は、あっという間に姿が見えなくなってしまった。

「かわいい!」

ルリエは、しばらくリスのいた梢を見上げていた。ポチが、先に流れを渡っていく。

「ポチ、そんなに急がないで」

ルリエとポチは、青々とした梢を映して流れる谷川をゆっくりと歩いていった。

だんだんと大きな石ころが多くなり、ちょっとした滝のように段差ができているところがあったりして、歩きづらくなってくる。それに、この日は山の家の近くも珍しく暑く、こんなことなら半ズボンをはいて、膝下まで流れにつかって行けばよかったと後悔する。

 

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