「おばあちゃん、ありがとう」

ルリエは、すぐに返事をしようと思った。

「すずちゃん、お手紙ありがとう。こちらは、とっても涼しくて食べ物もおいしく、東京にいたときは夏バテ気味だったわたしも、すっかり元気になりました。

きれいな水や緑に囲まれて生活するって、本当にステキね。朝は小鳥の声で目が覚め、夜はきらめく星々を眺めています。

これで、すずちゃんが来てくれたら最高! おばあちゃんは、何日泊まってもいいと言っています。ぜひ、来てください。昼間は近くの清流で遊んだり、夜はホタルや星を見たりしましょう」

ここまで書いて、ルリエははっとした。

(あっ、ホタル、どうしよう? すずちゃんは、ホタルを楽しみにしているんだ……)

そうなのだ。山の家へ来て十日もたつのに、ルリエはまだ一度もホタルを見ていない。あれから毎日谷川へ確かめに行くのだが、未だに姿を見てはいないのだ。美千代はお盆すぎだというが、それではすず子が来るまでに間に合わない。せっかく見たいと楽しみにしているのに、今さらホタルは出ませんとは言えない。

(どうしたらいいだろう?)

ルリエは、すず子からきた手紙を見つめながら考えた。

(そうだ、ホタル探しに行こう。谷川を上流の方へ遡っていけば、見つかるかもしれない。今日は七月三十一日だから、すずちゃんが来るまであと一週間しかない。それまでに、ホタルを見つけなければ……)

夕方、ポチを連れて上流へ行ってみることにした。東京ではほとんど雨が降らず、水不足が心配されていたが、カラカラ天気はこちらも同じで、谷川は少しずつ細っているように見える。ルリエは裸足になって冷たい清流につかったり、砂地を歩いたりして上流へ上流へと遡っていった。ポチも水につかりながら、嬉しそうについてくる。