年寄りの逆襲 バトル3

先手 エツコ

夕刻、貞さんの御前にパンツを持って参上。

朝夕、日に2回、オムツ、否、もとい、リハビリパンツを替えるのが、私のルーティンになった。貞さん、自身でトイレに行くし用を足すこともできる。が、数年前からリハビリパンツは必須アイテムになった。

替える前に大事な確認事項がある。これを怠ると大変なことになる。おしっこチェックだ。

「貞さん、おしっこは?」

「おしっこないの」

貞さん、たまにぶりっ子言葉になる。

「替える前にトイレに行ってこよう」

「いいの。ないの」と言う。本当に出ないのか、トイレに行くのが面倒なだけなのか当人でないので見当がつかない。

こちらも面倒になって、「本当だね」と念を押す。「うんうん」と大層に頷く貞さんを椅子から立たせ、こちらは屈んで両膝をつき、履いていたパンツを脱がせ、新しいパンツに片足を通す。と、突如我が手になにやら生温かい液体が。ひえーやられた。

「おしっこ出るじゃないの。なにが『ないの』だ。この噓つき貞」

そんな悪態をついている間にもどんどん上から垂れてくる。慌てて横に捨て置いた汚れたパンツを掴み、元凶に押し当てる。が、このままでは床が水浸し、否、しっこ浸しになる。

「お母さん、雑巾。やられた。早く持ってきて」と叫ぶ私。

そんな私の手に新たに今度は少し粘り気を帯びた液体が加わった。見上げると、貞さん、自分の股下で起こっている現在進行形の騒動を、口を開けて眺めている。