【前回記事を読む】店員さんの素敵な行動:「自分のためには、よう買わんけど」そう言いながら、試食した商品を贈答品に選んだ私に店員さんが…

おっさんのラプソディ

順調な人生

 

胃の具合が悪くなって2週間になるというのに、薬を飲んでも一向に良くならない。病院嫌いの私も流石に心配になって、近所に新しくできた診療所の門を叩いた。

退職してから2年間、人間ドックを受けていない。この際、胃の具合以外にも、血圧が高かったり、お酒の量が減ったり、日頃気になっていることを全部調べてもらうことにした。

血液検査、尿検査、胃カメラ、胸のレントゲン、エコー検査と、一通り検査を済ませると、後日、指定された日に、検査結果を聴きに来るようにと指示された。

モヤモヤを抱えながらの1週間の長かったこと。当日は出掛ける前に、重大な病気が見つかりませんようにと、ご先祖様に手を合わせた。

診察室に通されると、先生はパソコンを操作しながら、検査した映像を順番にスクロールして私に見せた。

「肺も奇麗ですし、肝臓の膿胞も癌化するものではありません。腎結石が見られますが心配ないでしょう。胃にある小さなポリープも良性です。ピロリ菌も陰性でした」

癌が見つからずほっとしたのであるが「では先生。2週間続いたあの苦しみは一体何だったのですか」と尋ねると、先生は少し表情を歪め「んんん、表現は適切ではないかも知れませんが、気を悪くせず聞いてください。貴方の年齢からすると、順調にお歳を取られているということです」

なるほど、思わず膝を叩いた。