切れる老人
最近のニュースを見ていると、老人が引き起こす事件や事故が後を絶たない。万引きや交通事故、ゴミ屋敷から殺人まで話題はこと欠かない。私の住む町でも例外ではない。
日本一長い商店街で有名な天神橋筋商店街。平日でもかなりの人出で賑わっているので、自転車に乗っての通行は禁じられている。
しかし、そこは大阪人。自分だけは絶対に事故を起こさないという根拠希薄な自信を基に、平気で自転車を漕いでいる。
喧嘩のような大きな声が聞こえてきたので振り返ると、お爺ちゃんが大きな声で喚いている。自転車に乗っているご婦人に向かって、聞くに堪えがたい罵詈雑言を浴びせているのだ。それは、最早注意というより、鬱憤を晴らしているという他ない。きっと、家庭や社会から疎外されている孤独感の表出だろう。
この老人、少しボケが入っているのかと思いきや、そうではない。ちゃんと、歯向かってきそうにないご婦人を選んでいる確信犯である。
また、夏のある日、市バスの中での出来事。
最近のバスは、アイドリングストップという性能が付いている。バスが信号待ちで停車すると、エンジンがその都度停止するあれである。昔と違い、エンジンが止まっていてもエアコンは止まらず稼働している。
そんなバスに乗り合わせたお爺ちゃんが喚き始めた。
「おいコラ運転手! エンジン止めるな言うてるやろ。暑うてたまらんやないか!」
このお爺ちゃん、隣にいる妻が制止するのを無視して、バスが止まる度に、このフレーズを繰り返していた。
「おいコラ運転手! エンジン止めるな言うてるやろ。暑うてたまらんやないか!」
自分が将来、そんな老人にならない保証は何処にもない。くわばらくわばら。
