たかが玉子されど玉子

専業主夫になって、かれこれ4年目に突入した。7歳年下の妻は、まだ現役で働いているので、私が家事を全て引き受けて当然である。
偉そうに言っているが、ちゃぶ台返しの昭和育ちが、時代に見事に適応しているところを認めて欲しい下心である。
朝出掛ける妻に朝食を摂らせ、食洗器を回す。全自動の洗濯機に洗い物を放り込み、コードレス掃除機で掃除を始める。
ひと段落すると、新聞に隅々まで目を通して、私の創作時間となる。この創作活動が、妻や子供には理解されず、「働いていない、暇なはずの人」とカテゴライズされている。
たまたま売れていないだけであって、専門教育を受けたれっきとした芸術家である。バカにしないで欲しいのだが、何か援助が必要な時は真っ先に私にお呼びが掛かる。
今日は、冷蔵庫の食材が減ってきたので、卸売市場まで足を延ばして、安いお野菜を仕入れに出掛けた。生活費のやりくりも、専業主夫の重要な任務だ。
自転車の前かごには大きなビニール袋が3つにもなった。夕飯のメニューを考えながら家路を急いでいるその時である。道路の段差で自転車が弾み、袋から玉子のパックが地面に落ちた。
慌てて拾ったが、10個とも全滅で割れていた。一瞬にして今日のやりくりがすっ飛んだ。
たかが玉子、されど玉子。
情けなくて泣けてきた。
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