【前回記事を読む】バスで怒鳴り散らす老人「おいコラ運転手! エンジン止めるな!」妻の制止も無視し車内騒然

おっさんのラプソディ

そんなに怪しいですか?

先日、いつものように自転車で画廊巡りをしていたときのこと。私の前に1台のパトカーが進路を塞ぐように停車した。中から、女性警察官1人を含む若い警察官3人が降りてきて、私に職務質問をし始めた。

「すいません。ちょっと、お話伺わせてもらえますか?」

私の出で立ちは、夏の暑い日ということもあって、上はアロハシャツ、下はダメージジーンズ、サンダル履きにカンカン帽だった。まあ、超チャライ格好と言えば言えなくもない。だからといって、一体私の何処が怪しいというのか。

「自転車に鍵が付いていなかったので」と、いちゃもんをつけてきた。「これは、僕がよく鍵を失くすので、自転車を買ったときに外してもらって、チェーンキーにしてるんです」と説明しても、しつこく食い下がってくる。

次は「お名前聞かせてもらえますか?」と来た。

「いやいや、結構です。決して怪しいものでは御座いません。お勤めご苦労さんです」と言って、振り切ってやった。

翌日、今度は商店街の角に立つ、男女ペアの警察官の姿が目に留まった。何もやましいことなどないのだが、一瞬、「鬱陶しいなぁ」という気持ちが過った。

以心伝心というか、それが相手に伝わって、案の定呼び止められた。

「すいません、旦那さん。少しお話伺わせてもらえますか?」

ほら来た。下手に出ているように見せかけて、実は慇懃な常套句だ。

「私は怪しい者では御座いません。先日も止められたところです」と言って、行き過ごしてやった。

後日、この話を行きつけのショットバーでマスターに愚痴っていると、「若い警察官の職質の練習台にされたんですよ。ややこしい相手でないという証明ですよ」と慰めてくれた。

ちょっとだけ救われた気分になった。