10
サトルは湖に向かって車を走らせていた。
もし、あの骨が自分の一卵性双生児の兄弟のものだったとしたら、兄か弟かわからないが、あの墓はその兄弟のものだったことになる。
あの寺の住職ならば何か知っているのではないか。サトルは直接会って、住職に聞いてみるつもりだった。
午後一時過ぎに寺に着いた。本堂を抜けた奥に一軒の古い家があった。サトルは呼び鈴を押した。
「はーい、今行きます」
奥のほうで女性の声が聞こえた。小走りの足音が聞こえ、すぐに戸が開いた。
「何でしょうか?」
白髪交じりの年配の女性が尋ねた。
「東京から来ました森本悟という者ですが、ご住職に会いたくて東京から来ました」
「森本さんですね。今呼んできますので少々お待ちください」
用件も聞かずに女性は再び小走りで奥へと消えた。まるで自分が来ることを知っているかのようだった。
「いや、わざわざ東京から来ていただき、ご苦労様でした」袈裟を来た初老の住職が優しい声で言った。
「あのお墓のことですね」
やはり住職は事情を知っているようだ。
「さあ、どうぞお入りください」
サトルは広い和室に案内された。さっきの女性がお茶をふたつテーブルに置き、お辞儀をして出ていった。
次回更新は9月7日(日)、18時の予定です。
【イチオシ記事】添い寝とハグで充分だったのに…イケメンセラピストは突然身体に覆い被さり、そのまま…
👉2024年、GLO人気ランキングを独占した『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様』著者の待望の最新作
『夢を叶えた、バツイチ香子と最強の恋男』
第1回記事 「今度こそ自分の好きなことをして生きたい」42歳で離婚した彼女は、仕事も住まいも変えて心機一転。そこで運命の出会いが…