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サトルは湖に向かって車を走らせていた。

もし、あの骨が自分の一卵性双生児の兄弟のものだったとしたら、兄か弟かわからないが、あの墓はその兄弟のものだったことになる。

あの寺の住職ならば何か知っているのではないか。サトルは直接会って、住職に聞いてみるつもりだった。

午後一時過ぎに寺に着いた。本堂を抜けた奥に一軒の古い家があった。サトルは呼び鈴を押した。

「はーい、今行きます」

奥のほうで女性の声が聞こえた。小走りの足音が聞こえ、すぐに戸が開いた。

「何でしょうか?」

白髪交じりの年配の女性が尋ねた。

「東京から来ました森本悟という者ですが、ご住職に会いたくて東京から来ました」

「森本さんですね。今呼んできますので少々お待ちください」

用件も聞かずに女性は再び小走りで奥へと消えた。まるで自分が来ることを知っているかのようだった。

「いや、わざわざ東京から来ていただき、ご苦労様でした」袈裟を来た初老の住職が優しい声で言った。

「あのお墓のことですね」

やはり住職は事情を知っているようだ。

「さあ、どうぞお入りください」

サトルは広い和室に案内された。さっきの女性がお茶をふたつテーブルに置き、お辞儀をして出ていった。

次回更新は9月7日(日)、18時の予定です。

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