「なのに両親は何も話してくれないんだ。写真だって一枚も残っていない」
「確かにその点は不思議ですね」
「そんなわけで、そのお寺で自分の墓を見つけたときはびっくりしました」
「名前と生年月日が同じで、死亡日が森本さんのちょうど記憶のない時期とぴったりだったんですね?」
「そうなんです。まるで五歳までのオレが死んで、新たに六歳のオレが誕生したみたいじゃないですか」
「偶然にしてはあまりにも偶然すぎますね」
「まあ、偶然って可能性もあるとは思いますが、こんな偶然が起こる可能性ってほんのわずかでしょう? それで、いけないことは承知で墓を掘り返して骨を一部取ってきたんです」
「そこで写真スクールで一緒だった僕に問い合わせてきたんです」山口が横から口をはさんだ。
「そしてその骨と森本さんの検体をもらって、先生にDNA鑑定をお願いしました。そしたら……」「鑑定結果はほぼ同一人物であると出ました。こんなことは本来あり得ない。だから、もう一度私自身が検体を取って、再鑑定させてほしいのです」谷口教授は再びサトルに頭を下げた。
「わかりました。オレだって本当の結果が知りたいです。再鑑定してください」谷口教授は山口に綿棒と試験管を持ってくるよう指示した。
次回更新は9月5日(金)、18時の予定です。
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