【前回の記事を読む】自分の墓を掘り返すと、骨壺の底に3、4センチくらいの幼児の骨が...
湖の記憶
5
鑑定結果が出るまでの間、サトルは前回撮り損なった湖二か所の撮影と、撮り溜めた写真の整理に費やした。サトルは湖の写真集を二冊出していた。三冊目の写真集の出版も決まっており、締め切りが迫っていた。
三週間後に、山口から電話が来た。
「森本か?」
山口の声にいつもの陽気さはなかった。
「ああ、オレだよ。結果が出たんだな」
「そうなんだ。それでね、もう一度大学に来てもらいたいんだ。うちの教授が聞きたいことがあるって」
山口の声には戸惑いの色が混ざっていた。
「お前の教授が? なんか問題でも発生したのか?」
「そういうわけじゃないんだ。あ、いや、問題と言えば問題なんだけどね」
「金が百万円もかかるとか、そういうことか?」
「いや、金の問題でもないんだ」
「じれったいな。じゃあ、何が問題なんだ?」やや間を置いて山口が言った。
「鑑定の結果、君とあの骨のDNAが一致したんだ」