【前回の記事を読む】自分の墓を掘り返すと、骨壺の底に3、4センチくらいの幼児の骨が...

湖の記憶

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鑑定結果が出るまでの間、サトルは前回撮り損なった湖二か所の撮影と、撮り溜めた写真の整理に費やした。サトルは湖の写真集を二冊出していた。三冊目の写真集の出版も決まっており、締め切りが迫っていた。

三週間後に、山口から電話が来た。

「森本か?」

山口の声にいつもの陽気さはなかった。

「ああ、オレだよ。結果が出たんだな」

「そうなんだ。それでね、もう一度大学に来てもらいたいんだ。うちの教授が聞きたいことがあるって」

山口の声には戸惑いの色が混ざっていた。

「お前の教授が? なんか問題でも発生したのか?」

「そういうわけじゃないんだ。あ、いや、問題と言えば問題なんだけどね」

「金が百万円もかかるとか、そういうことか?」

「いや、金の問題でもないんだ」

「じれったいな。じゃあ、何が問題なんだ?」やや間を置いて山口が言った。

「鑑定の結果、君とあの骨のDNAが一致したんだ」