【前回の記事を読む】「残念ですが、病院に着いた時にはもう…」足が震えるのを感じながら、妻と両親の容態を聞いた。父の運転には問題なかったはずだ…

湖の記憶

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「妻にはなんと言えばいいのでしょうか?」

サトルは二人の警官の顔を見上げながら聞いた。

「今すぐ話さなくてもいいですが、結局は話さなければならないのですから。ただ、まだショック状態にありますから、医者に相談してから話せばいいと思いますね」年配の警官が答えた。

「今日はよしておきます。明日、来たときに聞いてみます」「そうですね。そのほうがいいかもしれませんね」サトルは二人の警官に挨拶して、病室に戻った。

病室には若い医師がいた。

「こんにちは。私は担当をしております野口と申します」

「よろしくお願いします」

「見たところ右腕の骨折だけのようですが、念のため明日脳の検査を行う予定です。申し訳ないですが、見舞いは二十時までなので、そろそろお引取りいただかなければなりませんが」

「わかりました」

サトルは琴音の左手を握って言った。

「また明日来るからね」

「ごめんなさい」

琴音がまた謝った。