第1部 コロナ初期 未知のウイルスに対し我々は戦う武器もなく、防備の支度もない中で立ち上がった

I 未知のウイルスが日本に上陸〈感染初期〉
国内初の感染者が神奈川県で発生

新型コロナウイルス(SARS-COV-2)は2019年の11月には武漢で死者も出る感染流行の兆しを見せており、WHOでもその徴候を把握していたというが、中国政府がその存在を公表したのは1月9日であった。

1月10日にはその原因ウイルスが新型のコロナウイルスであると報告され、日本にもその遺伝子情報が公開された。1月14日には国立感染症研究所でのPCR検査が可能となっている。

国内患者の発生第1例目の報告は産経新聞報道からわずか9日後の1月15日で、神川県においてであった。

幸いにも初発患者1名の発症にとどまり、感染の拡大はなく終わったが、これには幸運が三つ重なっている。

幸運の一つ目は受診前に患者さんの妻が電話で第2種感染症指定医療機関である相模原協同病院に相談していたことである。

相模原市内在住の男性は武漢に里帰りしていた1月3日に発熱があったという。6日に帰国し、市内の診療所を受診した。しかし症状が改善しないため妻が相模原協同病院に電話で相談していたのである。

武漢からの帰国者であることを聞いた職員は、相模原市保健所に相談したが、「まだ法的な位置付けが決まっていない伝染病なので、保健所に指示する権限はない」と言われたという。

院長と相談し、同病院の判断で患者の受け入れを決断し、奥さんに受け入れを告げる電話をした。患者はすでに他の病院に行っていたため、奥さんが迎えに行き、協同病院を受診した、という経過であった。