なにやら、声が聞こえてきた。ふたりは大きな木を見つけると、その陰に隠れ、周りの様子をうかがうことにした。ふたりが目にしたのは、まるでお伽(とぎ)の国の世界そのものだった。白雪姫の本で見たような、そんな世界。妖精も共生する、結迦にしてみたら、夢のような世界だった。青い幻想的な色をした美しい蝶が乱舞していて、結迦はしばらくの間、見とれるほかなかった。

「こんな世界があったなんて……本当に、ここは地球の地下なの?」

そう思った結迦は、思いきって誰かに話しかけてみることにした。

「こんにちは。ここは、どこなのでしょう? 初めて来たのですが」

すると、身体の中で声が響くというか、テレパシーのようでもあった。

「ここは、ここは第二世界。小人ワールドだよ。地上では、アマゾンからアンデス山脈にわたる地底になる。多次元領域なので、人類が現実的に来ることはできない場所だけれどね」

小人たちは皆、魔法が使えるシャーマンのようだが、普段は魔法を使うことは、ほぼないらしい。ケガをしたり、ときたまの天候の荒れにより、生活に支障が出た場合にのみ、魔法を使うとのこと。

「楽しそうな世界ではないか。動物を狩ったりするのであろうか」

信長公は、興味津々な顔で小人に尋ねていた。

「そのようなことは、しなくなりました。稀に、動物が亡くなって間もないとき、恵みとして食べる者もいるようですが、基本、すべて土に還るよう自然のサイクルに任せます」

原始的かもしれないけれど、そのスタイルが自然なことのように、結迦には思えた。信長公は少し、つまらなそうな表情を見せたが、それぞれの命が、寿命を全うできるのがいちばん理想的ではないか、とも思っていたようである。

「この森の中で、他に美しい場所はありますか」

今度は結迦が、好意的に尋ねていた。

 

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