「ツイカノタブレットヲ フクヨウシテクダサイ」

「そんなに長い時間、寝ていたってことなのかしら」

「そういうことに、なるやもしれんな」

ふたりで追加のタブレットを服用すると、再度、情報収集をし始めた。このときのふたりの身体は、ちょうどそれまでの半分くらいの大きさになっていた。だがしかし、ドーム内の様子が、ふたりの変化にまるで同調するかのように、縮小されていたのである。なので、本人たちは、ほとんど気づいていないようだった。なんとも面白いトリックがかかっているようである。

三粒目のタブレット服用のアラームが鳴った。

「これで、タブレットは最後ですね」

「本当に、俺たちは小さくなっているのか、全くもってわからんな」

「そうですね。さあ、信長さま。いよいよドームの外へ、行けますね」

結迦はワクワクしていた。そう思った途端、眠気にあらがえず、またふたりで眠りへと落ちていく。

目が覚めたとき、ふたりは、川のせせらぎのような音が聞こえる草原の上にいた。お互いに笑顔で起き上がると、気の向くままに歩き出していた。ふたりは自分たちが、小人サイズに変わっていることには、まるで気づいていないかのようだった。視界に、こんもりとした森らしき木立ちが現れた。結迦の心は、途端にはしゃぎだし、歩く速度が増していく。

「信長さま、急ぎましょう。誰かに会えるかもしれませんよ」

「まさか、命を狙われるとか、ないのだろうな」

「戦の世は、終わっているはずです。だって、ここに争いのエネルギーを感じませんよ。原始的なのか、最先端なのか、どちらでしょうね」