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翌朝、美春は会社が休みなのに、昨日と同じ時間、つまり、いつもより三分早めにバス停へと向かった。沙也加の言葉が頭から離れなかったからだ。
“幽霊バスの正体を確かめてやる“
バス停には昨日と同じようにバスが停まっていた。美春は走って、間一髪バスに乗ることができた。車内は相変わらず冷凍庫のように冷え、座席は顔色の悪い若者たちで占められていた。
バスはいくつもの停留所を停まることなく走り続けた。途中乗車する者、途中下車する者は誰もいなかった。美春の知らない町をいくつか通り過ぎ、バスは終点の市立病院前で停まった。
今までまったく動こうとしなかった乗客たちがゆっくりと立ち上がり、出口へと向かった。乗客たちは運転手に定期券のようなものを見せてバスを降りていった。美春は最後に出口に向かい、定期券を運転手に見せた。
運転手は不思議そうな顔で美春を見た。
「あなたは今日のリストには入っていませんから、ここで降ろすわけにはいきません」運転手はバスのドアを閉め、今来た道を戻り始めた。美春がいくら理由を問い質しても、運転手は一言も答えなかった。
美春は仕方なしに、自宅のある停留所で降りた。
謎は解明されるどころか、さらに深まった。
“リストって何? リストに入っていないと降りられない停留所って何?”
美春はバス会社に電話した。
「はい、東丸交通です」
女性の明るい声が答えた。