美春は今朝の出来事をなるべく順序立てて話した。「大変失礼ですが、お話の内容がよくわかりかねますので、こちらから質問させていただいてよろしいでしょうか?」
「はい」
「あなたが乗られた停留所は若松一丁目でよろしいですか?」
「そうです」
「どこ行きのバスでしたか?」
「市立病院前行きです」
「申し訳ございませんが、現在市立病院前という停留所は高綱町と名前を変えておりまして、市立病院前行きのバスも高綱町行きに変更しております」
「えっ、そうなんですか? 確かに市立病院前って書いてあったと思ったんですが」
「何時発のバスに乗られましたか?」
「七時二分だと思います」
「あの、当社の運行表では高綱町行きのバスで若松一丁目、七時二分発はありません。六時五十五分と七時五分のあいだにはバスは一本もありません。本日の朝は特に問題もなく、バスは予定どおり運行されています。何か勘違いしていらっしゃいませんか?」
「他に市立病院前行きのバスはありませんか?」
「はい。他社も含めて運行しているのは弊社だけです」そうまで言われてしまうと、美春は引き下がるしかなかった。
「すみませんでした。どうもありがとうございました」美春は渋々電話を切った。
次回更新は8月26日(火)、18時の予定です。
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