季節は春を迎えた。

のととぽろもきの家の周りには早春の草花が咲き乱れ、近くの山では桜の木が色あざやかに花を咲かせるようになった。

ぽろもきは使わなかったお金で2人の家を少しきれいにした。屋根の色も変えて、のとが好きな色の屋根にした。のとは初めて味わう幸福を噛みしめていた。また港町のカーティムのパン屋さんで働いていた。

ぽろもきは勉強を頑張って始めていた。やがて、大都会島から再試験の知らせが来た。ぽろもきは大都会島の仕事についてたくさんお金をもらって、大都会島に引っ越し、のとにいい暮らしをさせてあげようと考えていた。しかし、まずは再試験に受かって、仕事を選んでから考えることにしていた。

それから、のとを大都会島に住む両親にも紹介しなければと思っていた。ただ、喜んでくれるとは思えないので、喧嘩別れのようになって、もう以前の家族には戻れないような気がしていた。それはそれで仕方がない。

今、自分にとって大切な人は、“のと”だから。

大都会島の再試験は、許可が出てから改めて申し込みをして、次の日に行われることになっていた。

2人ともこの時はまだ、この日常生活を一変させる出来事が起こることは全く予想していなかった。2人で一緒に暮らせることに喜びを噛みしめながら、身近な未来を夢見ていた。