【前回の記事を読む】変な病気、うつされそう…一本早いバスの様子に、違和感。全員で一点を見つめる、顔面蒼白の乗客でいっぱいだった。

あなたの子供が生みたかった

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部内のみんなに迷惑をかけているのはわかっている。だからあの日退職願いを課長に出したのだ。しかし、課長だけでなく、同僚たちも美春が退職するのを止めてくれた。

みんなの親切が痛みを抱えた胸にさらなる圧迫感を加えたが、美春自身働かなければ生きていけないのだから、好意を素直に受け取ることにした。

今、美春は週三日勤務している。仕事内容も書類整理など軽い業務だけしていればいい。いわゆるうつ病からの業務復帰マニュアルに沿った対応である。“なんだか新入社員に戻ってしまったみたいだな”美春は思った。

“あの事故さえなければ、こんなことにならずに済んだのに”その思いは今も胸から消えることはない。