【前回の記事を読む】あいつらが同じ病院にいると聞いた瞬間、「もう終わりよ」と半狂乱で泣く彼女…その時初めて、彼女が何をされたのか知ってしまった。
眠れる森の復讐鬼
「経子さんは梨杏に罪を着せたくなかった。経子さんにとっては梨杏が生き甲斐だった。梨杏が死んだ以上、自分もその後を追うと決めたんだろう。それなら、俺の罪も自分が背負って死ねば、梨杏の死も無駄にならないと考えたと思う。だから、急いで新たに自分の遺書を書いた。
俺はその時、宇栄原桃加と花火大会に出かけていたが、この話は経子さんから電話で聞いた。俺は目の前が真っ暗になって挫けそうになったが、あの女を双亀岬から突き落とすまでは帰れないと思って階段を上っている時に、後ろから経子さんが現れて、宇栄原を刺した。その時に経子さんから梨杏の遺書を受け取って、後で処分した」
言い終えると、蒼は少し疲れたような表情をした。
「蒼、自首しろ。それがお前の責任だろ」
海智が真剣な表情で詰め寄った。
「梨杏と経子さんは俺の罪を庇うために死んだ。そのことは無駄にできない。俺は自首しない。それが二人の思いに応える俺の責任だ」
海智はポケットからボイスレコーダーを取り出した。
「今までの話は全て録音した。これを警察に提出することもできる。だが、その前にお前が自分で警察に説明しろ。たとえあいつらがどんなに憎くても殺していいわけじゃない。お前の復讐心が却って梨杏や経子さんを死に追い詰めたんじゃないのか。お前が自分の罪を認めることが彼女達の死に報いることになるんじゃないのか」
蒼は振り返って、海智の顔とボイスレコーダーを見比べていたが、突如大声で笑いだした。
「あはははは、あはははは」
「何がおかしい」